指導員
道場長御挨拶
いかならむ時にあふとも人はみな まことの道をふめとをしえよ
武道は、武士道の伝統に由来する日本で体系化された武技の修錬による心技一如の運動文化で、心技体を一体として鍛え、人格を磨き、道徳心を高め、礼節を尊重する態度を養う人間形成の道です。
また、三種の神器の一つである剣(つるぎ)に代表されるように武道は日本の伝統文化の一つであり、現在、新たなグローバルスケールで、世界各国の人間に愛好されており、日本の伝統文化の中で最も世界中への普及が成功しているのは武道であると言っても過言ではありません。その理由として以下の現実的効果があげられます。
「戦わずに勝つ、若しくは敵をつくらないための礼儀作法(人と仲良くする技術)」
「生死の狭間で生まれた究極の身体操作法(身体能力の向上)」
「手(指)・足、そして全身を自由自在に動かすことによる頭脳力の向上(手・指は第二の脳)」
「呼吸法や瞑想法による心と精神の安定(精神安定作用)」
「鎧兜や草鞋のヒモが緩んでいたことから、うまく動けずに切り殺されてしまった等の経験から生まれた躾・所作」等々、
以上のように、武道には、現在に通用するさまざまな知恵(原理原則)や哲学が残されています。
さて、本来は、「幸せになろうとする者を阻害しようとする者がいた場合に、その阻害する者を排除するために生まれてきた殺傷技術」であったわけですが、その成り立ちとしては、日本人が、戦国時代など、戦乱の世といわれる日々を多々経験した経緯から発生したと考えられます。
具体的には、戦いの最中、少し足がつまずいたことで斬られてしまった、ほんの一瞬、刀の振り方が遅かったがために殺されてしまった、また、鎧や兜の紐の閉め方が弱かったため外れて斬られてしまった、さらには、心が動揺して持てる力が発揮できなくて命を失った‥など、そのような名も無き者達がたくさんいたと思います。
彼らには、きっと愛する家族や恋人などがいたことでしょう。残念でならなかったと思います。つまるところ、足がつまずいた程度のことで死ぬなんて納得できない、我慢ならない、そのような者達の「どうにかならないものか‥」という祈るような気持ちから武術は生まれた、と考えます。
そして、その祈るような心から、安定して速い歩法や人体の構造上科学的に最も速く刀を振ることができる研究、服装や着衣の乱れをなくす躾や身だしなみの工夫、さらには、心が動揺しないよう禅や宗教世界の探究、さらには、立場をわきまえ不快感を与えないという礼の文化、姿勢の正しさによる心身の能力の最大限の発揮、身だしなみ、身を守る心得など、長い年月をかけて武道に昇華し、大成された世界的な文化遺産である、そのように考えています。
また一方、本来は殺傷技術である武術の訓練が、人間の精神を高める武道にまで発展した理由として、日本古来の信仰である神道の禊祓いの精神があったからといえます。武器には神霊が宿る考えから、武術を使う体と心は、明るく、清く、正しく素直でなくてはなりません。このような理由から行動様式として、禊や祓い清める祈りが根本になります。
禊とは、身についた汚れをとりのぞき、神の恵みの水を体にそそぎ神性を体することで、祓いとは、正気をはって邪気をはらうことです。これらの思想が根本となり、剣術が剣道として、柔術が合気道や柔道に昇華し、発展してきたと考えられますが、近年、先人の努力により、日本武道の精神性の高さの理解が進んだことで、全世界に広がってきたといえます。
最後になりますが、「もののふの道」(武士道)は、わが国が世界に誇る伝統文化ですが、その本質は、武道を通じて、自己の心身を日々鍛えることにより、しなやかで強靭で誠実な「まことの道」を実践することに他なりません。
人はたとえどのような境遇にあろうとも、また、いかなる事変に遭うとも「まことの道」を踏むことが大切だと信じます。それは嘘偽りのない「明(あか)き、清き、正しき、直き心」であり、「至誠の心」と申すものでありましょう。
来年(2025年)は、はからずも昭和100年、そして戦後80年の年にあたります。このことから、時代の再検証と共に温故知新、古きを温ね新しきを知る時代がくるのではないかと考えています。これらのことを鑑みて、先人たちの偉業に尊敬と感謝の心を忘れることなく、より一層稽古に研鑽努力を重ね、門人一同、いつの時代も変わらない日本武道の精神ともいえる「まことの道」を追求してまいります。
今後ともよろしくお願いいたします。
合気道宮崎神宮道場長 小谷達也
【道場長インタビュー集】
道場長略歴
【プロフィール】
(公財)合気会師範
タイ捨流剣法免許皆伝師範
宮崎合気道会理事長(宮崎県合気道連盟理事 宮崎市合気道連盟理事長 西都市合気道連盟会長を兼務)
幼少の頃より武道に縁があり、少林寺拳法、日本拳法、空手を修める。
社会人になってから合気道に入門。同時に鉄舟会系の禅を学ぶ。
宮崎合気道会会長の高橋暁師範に出会い師事し、各種武器術及び各種呼吸法を学ぶ。また、タイ捨流剣法第13代宗家の山北竹任師範より免許皆伝を受ける。
その後、世界各国で活躍されている小林保雄師範、畑山憲吾師範及び小林弘明師範に薫陶を受け、合気道と縁の深い哲人中村天風氏の哲学と心身統一法を学ぶ。
現在、当道場と合気道元徳会を主宰し、合気道を追求しながら、武道の理に基づいた生き方を模索している。
【略歴】
昭和45年 宮崎県出身
平成 7年 (公財)合気会に入門
平成15年 宮崎合気道会グループの高橋暁師範に師事
平成18年 宮崎合気道会グループの指導員を務める
平成19年 合気道佐土原道場を設立
平成21年 宮崎合気道会グループの師範代を務める
平成22年 合気道の専門道場である元徳館武道場を建設
平成27年 第53回全日本合気道演武大会に出場
平成28年 第54回全日本合気道演武大会に出場
平成29年 第55回全日本合気道演武大会に出場
平成30年 第56回全日本合気道演武大会に出場
令和元年 第57回全日本合気道演武大会に出場
‥現在に至る。